―1週間の酒断ち その2―
―1週間の酒断ち その2―
前回記事に続き、「その2」は9日間の酒抜きによる、思考面への影響を話していきたい。
■思考面への影響
1.思考力
酒を抜くことで思考力は確かに回復する。しかも、かなり効果がある。
多量飲酒を続けている人間ほど、この傾向は顕著に出るはずだ。
まず、飲酒を継続しているときの状況から書いていく。
痛飲の翌日はまずまともに仕事ができない。思考力ゼロ、会話力ゼロという有様であった。特に会話に至っては、相手の言うことは何となく理解できるものの、脳内で情報整理が遅れ、発話するまでに時間を要することが度々あった。切実に言語障害が起きているのではないかと心配するレベルである。本当に会話の大部分が「あー」とか「えー」に占拠されたこともあった。
これはシンプルに翌日まで酒が残っていただけかもしれないが、飲酒中とは異なり、意識が冷静なだけに焦った。
また、深酒を繰り返していると、一日中頭にモヤがかかったようになる。筆者は毎日酒を飲むわけではなかったが、常人と比較すると1回の飲酒量が半端ではないため、ずっと脳に酒が居座っているような感覚があった。日常的な生活や仕事面で大きな支障が出るような状態ではないものの、脳神経に足枷がはめられているようであった。
新聞やニュースから情報・物事を理解する際、敷衍して発想することや、連続的な階層の掘り下げに苦慮することが多かった。言い換えると、思考が途中でストップしてしまい、雑音が思考の中を巡るということになろうか。
長年の飲酒習慣及び加齢とともに、脳の衰えを痛感していた。あまりにも日常的なことであったため頓着していなかったが、実際に4日ほど酒から離れると、思考力は確かに良くなった。
別に頭が良くなったとかそういう話ではなく、元の状態に戻りつつあったと言える。
実際、仕事で企画作業を行っていても、飲酒中であれば、頻繁に椅子の背もたれに寄りかかり、虚空を仰ぎ見ながら空想に浸ることが常であった。しかしながら、ここ数日はかなり前のめりでPCを打鍵し続けることができていた。脳を使うことを厭わず、むしろ楽しいとさえ実感していた。
2.行動力
積極性が高まったという表現が正しいかもしれない。
まず、深い睡眠を確保することができるようになって、脳・体の疲れが軽減した。寝起きも良くなり、朝から快活になったのは事実である。
前日の酒が残っている状態では、どうしても動くことに及び腰になり、平凡な日常をそつなくこなすことに従事していた。飲酒習慣があると、夜は「酒の時間」として捉えられ、その楽しみのために朝昼の時間を漫然と消化する。否、酒により行動力の発露が抑え込まれ、怠惰な生活を甘受してしまうのである。
だが、酒が体から抜け、脳がきっちりと仕事をし始めると、一日という時間の消費にプランニングが入る。時間の浪費を嫌うようになるのである。仕事や趣味をしていても、集中力が高まり時短になる。
たった9日間だけの酒断ちであったが、この効果は明確であった。
禁酒・断酒により人生すべてが好転するという論調は疑問であり、はっきり言ってあまり好きではないが、一日の使い方に変化が出るのは間違いない。
3.考え方
これは行動力とラップする部分があるが、まず、動くことに積極性を持つようになる。
生来引っ込み思案で、行動を起こすことに時間がかかるというのもあるが、飲酒習慣により「面倒くさい」という感情が上乗せされ、行動力は相当落ち込んでいた。
だが酒が抜けると、否が応でも酒以外の楽しみを求めるようになる。従来の行動に対する報酬はアルコールで酔うことであり、これによる脳内麻薬で日々の悦びを享受していた。酒抜きにより脳内麻薬が産み出せないとなると、何か別の方法を脳が模索し始めるのは至極当然のことなのであろう。
元々筋トレと投機が半分趣味のようなものであったが、こちらへの時間配分が増えたのは事実であるし、さらに何か別のものを探している自分もいる。このブログもその一環なのかもしれない。
あと付け加えると、些事が気にならなくなった。
どうも酒を飲んでいると、些末なことに意識が向き、つまらない時間を割り当てているような気がする。
卑近な例で言うと、業務上のメールを作成する際、必要以上に相手の心情を裏読みしてしまっていた。表現が失礼ではないか、この文脈でこちらの意図をくみ取ってもらえるか等々、、、
しかしながらこの点に関しては、酒を抜き始めてから次第に気にならなくなった。
酒抜きによる集中力が増したことにより、本来注力すべき事柄に邁進することで、気にならなくなったのであろう。
この点については浅薄なポジティブ思考というようなものではなく、そもそも何故酒に浸るような生活を送っていたかという面にまで遡る必要がある。詳細はまた後日にするが、一言でまとめれば、酒を飲む習慣が自身を矮小化させていたところ、そんな自分が酒をコントロールして、米粒ほどの自信を取り戻したからである。考え方が変わる要因などは、マインドとしてはちっぽけな認識変化であって、大元は行動の変化でしかないのだと思う。
4.時間の使い方
上述したが、時間の使い方は変わらざるを得ない。
特に脳の報酬系回路を快い感情で充足するためには、アルコールに匹敵するような時間の使い方が求められる。下卑た言い方をすれば、中毒性が高いアルコールに代替する、脳汁があふれ出ることをしたくなる。
では、筆者にとってそれが何かというと、当面は「筋トレ」と「投機」である。
この二つは趣味に近いものであるが、図らずも心地よい脳内麻薬が出る。
アルコールを体内に取り込む代わりに、筋トレと投機により一種の興奮を獲得することができる。
酒を飲まなければ、仕事が終わりに寄り道することなく真っすぐ家に帰る。帰宅後、さて何をしようかと考えたときに、ジムに行くという選択肢がまず出てくる。
1~2時間みっちりとトレーニングすることで心地よい汗をかき、ドーパミンとアドレナリンが脳内に充溢し幸福感を味わえる。
トレーニング後は健康的な夕飯を食べる。まだまだ就寝まで時間があるため、ゆっくりと投機銘柄の選定を行う。大きな金額を動かし短期的売買を繰り返すスタイルではなく、1週間くらいの期間の値動きを追いかけるスタイルである。神様でもなければ値動きを完全に読むことなど不可能であり、買ったり負けたりではあるが、これはこれで面白い。負ければ当然気分の良いものではないが、大勝ちを狙うより、大負けしないことを念頭にトレードすれば比較的淡々とインアウトを実行できる。
酒を抜いていた期間は、慌ててトレードすることなく、じっくりとタイミングを待つことができていた。これは負けないためには重要なことであり、おおきな効用であった。
5.まとめ
ということで、短期間ではあるが思考面の変化をまとめると次のような話かと思う。
・飲酒疲労が残らないため、朝から気分よく行動できる
・集中力が上がり、思考力が回復する
・つまらない事柄に気を揉まなくなる
・時間の使い方が変わる
Moriss